鍼灸の作用・治療回数について
鍼灸に治療をもとめる方の多くは、腰や膝、肩や首など身体のさまざまな部位に痛みを抱え、ひどいときは動作の制限なども伴ってしまい、医療機関を受けてきたけどなかなかよくならず、最後の手段のように『この痛みをなんとかしてほしい』と訴えて来院されます。
鍼灸はなぜ痛みに効果があるのか
鍼灸がなぜ「痛み」や「身体の不調」に有効かについては
①血液循環の改善
②筋肉の過緊張の緩和
③脳内鎮痛物質の分泌
④自律神経・免疫系への作用
など、科学的にも少しずつ解明されてきています。すべての場合が1回の治療で改善するかというと必ずしもそうとはいえませんが、症状が出始めてから日にちがあまり経過していなかったり、歪みかたの度合いが激しくないようなときは、少数回の施術でほぼ解決をみることができます。
発症から3ヶ月以上のような長い時間を経過してしまっているものの場合、患部のみならず繋がりのある他の部位にまで影響を及ぼして歪みが複雑化したり、自然治癒力が十分に機能できず『改善しにくい悪循環』をおこしていることが見受けられます。この悪循環を断ち切るためには、大元になっている部分と、必要に応じて枝葉・末葉にあたる各所への施術が必要になります。また、
『日頃どのような姿勢でいることが多いか』
『からだの使い方のクセはないか』
に目を向けることも、とても大事になります。ほとんどの場合、痛みが改善すれば治療は終了となりますが、
『同じ痛みに二度と苦しみたくない』
『予防のために』
『からだの管理に』
と、定期的なからだのチェックに引き続きお見えになる方も増えています。言ってみれば、歯医者さんにおける定期検診のような受診の仕方をしてくださる方が多くなりました。
東洋医学の本来の考えが『未病を治す(病気になりにくいからだづくり)』というものであることから、このように受診されることは大変喜ばしいことと感じています。
受診の際は細かい問診と身体状態のチェックを行います。どうか面倒くさがらずに細かいことまでお伝えください。
情報量が多ければ多いほど、術者の知識・経験から導き出される像が明確化されていきます。
伝えるだけ伝えたら、あとは施術者におまかせください。
★上述したように、症状の強さ・種類によっては十分な改善に数回の施術が必要なことがありますが、「まずは一回、鍼灸治療というものを試してみたい」という方も歓迎いたします。また、「自分が施術を受けているところを写真におさめてほしい」というご要望がたまにあります。ご自分のスマートフォンをご用意いただき、操作方法を教えていただければ鍼を打っているところなどを撮影いたします。気軽にお申し出ください。
治療の回数について
わかりやすい例で挙げると、ギックリ腰などは通常1~2回(症状の経過をみながらもう数回行うこともあります)。
基本的に「発症してから間もないもの」は、概ね5回以内で片が付くことが多く、発症から3ヶ月以上経過しているものなどは、歪み方が複雑になっていたり他の部位(筋肉や関節など含む)への広がりをみせてしまっている場合もあり、すべてを整えるのに時間がかかることがあります。
治療後や次回受診日を決める際にも状態を聞き、日常生活での苦痛の度合いが(最もひどかった時を10として)、1~2くらいの「ほとんど気にならないレベル」になったらそのあたりが一度時間を置いてみるひとつの目安になります(あとは自然治癒力にまかせておけば治っていくことも多いので)。
ただし、治癒に時間がかかったものに対しては、念のため1ヶ月後の再チェックをおすすめしています(歪みが戻りつつある状態になっていないかチェックします)。ここでなお調子がよければその日で一度治療を終えることになります。
再発防止のための定期的な受診を提案することもありますが、これは患者さんとお話した上で「大丈夫そうなのでしばらく様子をみる」ということであれば、「また悪化時に早めに連絡する」ということで終えます。
治療の回数は費用の面などでも気になることであると思いますので、もっと具体的にお聞きになりたい時は遠慮なくいつでもご相談ください。
皮内鍼(おきばり)を受けられた方へ
「皮内鍼治療」は、通常の皮下組織まで針先を届ける治療と違い、ごく小さな特殊な形をした鍼を皮膚表面に対しほぼ平行に、透けて見えるくらいに薄く・浅く刺入して絆創膏で固定します。
これを数日間にわたって留めることで、軽微な刺激を長期間持続的に与え、患部の消炎・鎮痛効果を期待する治療です(厳密には、もっと多面的な効果もありますが)。簡単にいえば、普通の刺鍼をぐーっと押し込む「指圧」とすれば、皮内鍼は「皮膚表面を軽くさすってあげるような優しい刺激」を長い期間与え続けるものです。
からだの中に自然と入っていくことは絶対にありませんのでご安心ください。
装着期間としては大体1週間くらいを目安にしていますが、それ以上つけていても害になることはありません。
ただ、人体の方で刺激に対する「慣れ」が起こるため、この期間を超えて装着していても効果が薄くなることが
予想されます。帰宅後、絆創膏部がチクチクして不快なときは、ご自分で剥がしていただいて結構です。「皮内鍼」は装着をしていることを忘れてしまうほど無感覚です。
皮内鍼をつけている間もお風呂に普通に入っていただいて結構ですし、運動も行っていただいて差し支えありません。入浴時は絆創膏部はゴシゴシと洗わず、手でやさしくなでるように洗ってあげてください。ゴシゴシしてしまうと勢いで絆創膏が剥がれてしまうこともありますので。
※絆創膏が剥がれたら針も一緒に剥がれるようになっていますのでご心配はいりません。
まれに絆創膏部が痒くなる方がいらっしゃいます。絆創膏の粘着剤によるものと思われますので、もし痒みを感じるようなことがあればすみやかに剥がしてください。我慢してつけ続けるとカブれてしまうことがあります。
ご不明・ご心配な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。
吸角(カッピング)治療について
当院では血液循環を促進するうえで、必要に応じてカッピング(吸角、吸玉治療ともいわれています)を行うことがあります。
これは、滞っている血液の存在を疑われる部位の皮膚表面にカップを置き、専用の装置を用いてカップ内に真空状態をつくり、経皮的に吸引をかけ循環の改善を求める方法です(主に頚部、背部、腰部に用いられます)。
出血はしませんが、血流の滞りが多かったところほど、皮膚表面に赤色や紫色の着色をみます。
大体1週間~10日ほどで着色部はきれいに吸収されて元に戻りますが、美容上困るという方は治療者にその旨お伝えください。
この治療は、よくアスリートの方がトレーニング後のボディケアとして、疲労を残さないために行う治療のひとつとしてよく行われています。
以前、ハンマー投げ現役時の室伏選手がこの治療をされているのを、特集番組の中で紹介されていました。